【絶縁距離】沿面距離と空間距離で測定すべき経路とは?

【絶縁距離】沿面距離と空間距離で測定すべき経路とは? 規格

----- スポンサーリンク -----

目次

はじめに

身の回りの電化製品をはじめ、コンセントやバッテリを繋いで動く製品には、基板すなわち電気回路が製品内部に組み込まれており、電流を流すことで、様々な機能を持った数多くの部品を動作させ、1つの製品として機能しています。
この基板すなわち電気回路上には、縦横無尽に電流の通り道となるパターンが張り巡らされています。
この電流の通り道に、別の電流が混ざった場合、短絡(ショート)状態となり、回路上に設計値を超える大きな電流が流れることで、半導体などの個々の部品が異常に発熱し、やがては焼損といったように、火災の原因に繋がります。
このような短絡を発生させないために、UL規格をはじめとした規格が制定されており、製品の使用用途に応じて、パターン間は○○mmの間隔を設けなさいや、電源端子間はXXmmの間隔を設けなさいといった規格値が定められています。
この短絡させないための間隔のことを絶縁距離と呼んでおり、この絶縁距離は規格上、沿面距離と空間距離といった2つの距離で規定されています。
今回は設計を進めていく上で必要となる、これらの2つの距離について、具体的にどの部分の距離(経路)を表しているのかを、図を使って詳細に見ていきたいと思います。

----- スポンサーリンク -----

絶縁距離とは

絶縁距離とは、電流が流れるところ、すなわち導電体同士を短絡(ショート)させないための距離を表しています。

絶縁距離

冒頭でも触れましたが、短絡は火災などを引き起こし、人命に関わる大きな事故へと繋がってしまことから、UL規格をはじめとした規格上で、設計上守らなければならない絶縁距離が定められています。
よって、エンジニアが設計を行う上で、この絶縁距離がどの部分の距離を示しているのかを具体的に知っておく必要があります。
絶縁距離は規格上、以下のように沿面距離と空間距離といった、2つの距離に分けた形で定められています。

■絶縁距離
・沿面距離:○○mm以上
・空間距離:✕✕mm以上

また、これらの距離は全て一律ではなく、製品カテゴリや環境汚染度、電源電圧の大きさや部品などに応じて、様々な規格値が定められています。

■絶縁距離に関する規格値
[端子台]
 ・沿面距離:○○mm以上
 ・空間距離:✕✕mm以上
[プリント基板]
 ・沿面距離:△△mm以上
 ・空間距離:□□mm以上

製品設計を行う際は、これらの沿面距離と空間距離を確保した設計を行うことで、短絡を防ぐ必要があります。

ユーザーの安全と規格に関する法令違反を起こさないためにも、これらの規格値をしっかりと確認した上で、設計を進めていく必要があります。
そのためにも、絶縁距離を示す沿面距離と空間距離が具体的にどの部分の距離を表しているのかを理解しておく必要があります。
次項より具体的な図を用いて、詳細に見ていきたいと思います。

沿面距離とは

沿面距離とは、導電体間を絶縁体の表面に沿った経路の最短距離を表しています。
以下に沿面距離を示す具体例と、具体例に記載している寸法Xに関する値を記載します。
寸法Xは、製品が使用される環境によって汚染度が1〜4まで規定されており、汚染度により値が異なります。
また、寸法Xを基準とした値に応じて、最短距離を示す経路が異なるため、注意するようにしてください。

沿面距離を示す具体例

沿面距離(赤線):絶縁体に溝がある場合の沿面経路
沿面距離(赤線):絶縁体の結合部が非接着である場合の沿面経路
沿面距離(赤線):絶縁体に壁がある場合の沿面経路

----- スポンサーリンク -----

汚染度と寸法Xの関係表

沿面距離と空間距離:汚染度と寸法Xの関係

----- スポンサーリンク -----

空間距離とは

空間距離とは、導電体間の空間経路を含めた最短距離を表しています。
絶縁物の表面に沿った遠回りとなる経路をたどる必要はなく、空間を使った近道を用いた経路を表しています。

空間距離を示す具体例

沿面距離と同じ絵を使って空間距離を示します。
寸法Xについても沿面距離と同じ値となります。
必要に応じて、沿面距離と対比しながら違いを見比べてみてください。

空間距離(赤線):絶縁体に溝がある場合の空間経路
空間距離(赤線):絶縁体の結合部が非接着である場合の空間経路
空間距離(赤線):絶縁体に壁がある場合の空間経路

----- スポンサーリンク -----

汚染度と寸法Xの関係表

沿面距離と同じ

沿面距離と空間距離:汚染度と寸法Xの関係

最後に

電化製品をはじめとする電流が流れる部品は、規格上、上記のような絶縁距離(沿面距離&空間距離)が規定されているため、設計変更を行う際は、十分に注意する必要があります。
形状変更を行う際は、少なくとも絶縁距離が規格値以上となる設計が必要となります。
また、規格認証をとった製品の場合、変更内容を認証機関に伝え、変更内容が規格上、問題がないことを確認してもらい、再度規格認証をしてもらう必要があります。
以上のことから、設計者の独断で変更を進める訳にはいかないため、新規設計を行う際はもちろんのこと、設計変更を行う際は、規格上問題がないことを十分に確認した上で、進めるようにしてください。
エンジニアサイドから見ると、軽微な変更であっても、都度規格認証を得ないといけないといったわずらわしさがあるかと思います。(時間やコスト面においも…)
そのような一面もありますが、安全な製品を世に送り出すためにも、規格値が確実に守られていることを確認し、できれば規格値に対して少しでも余裕のある設計を日々心がけていきたいものです。

----- スポンサーリンク -----

参考規格

・IEC 61010-1:Safety requirements for electrical equipment for measurement, control, and laboratory use – Part 1: General requirements
 └ ・JIS C 1010-1:測定用,制御用及び試験室用電気機器の安全性-第1部:一般要求事項

関連図書

----- スポンサーリンク -----