アルミ押し出しヒートシンクを設計する際のポイント2つ

アルミ押し出しヒートシンクを設計する際の設計ポイント 製品設計のいろは

目次

はじめに

はじめてアルミの押し出しによるヒートシンクを設計する際、右も左もまったく分からない状態かと思いますが、形状を考えていく上で最低限、押さえておくべきポイントが2つあります。
時には製品仕様を満足させるべく無理な形状を加工メーカー様にお願いしなければならないこともありますが、この2つのポイントを守ることで、トラブルの少ない量産性に優れた部品の生産を可能にします。
エンジニアは試作や量産時において、形状起因によるトラブルが最小限にすべく、設計段階でポイントを押さえた形状を作り込むことがとても重要であり、腕の見せ所となりますので、今回はトング比をはじめとした設計ポイントを少し深堀りしていきたいと思います。

そもそも押し出し加工とは・・・

押し出し加工とは「ところてん」のごとく押し出しによって部品が生み出される加工方法となります。身近なものとして、家の窓枠に使われているアルミサッシをはじめとした建材が多々あります。部品の断面形状を一気に長く押し出した後、図面指示どおりの長さにカットするといった製造工程で、角材や丸材を切削によって作り出す部品や板金やプレス加工による部品と比較し、短時間かつ低コストで大量に生産を行うことができる加工方法の1つとなっております。

概要
素材を圧縮してダイスと呼ばれる金型から押し出し、必要な形状の断面を形成する。製造プロセスとしての利点は、非常に複雑な断面形状を形成できる点と、素材にかかる応力が圧縮応力とせん断応力だけであるためもろい素材も成形できる点である。また、押し出された表面は非常に滑らかになり仕上げが不要である。一般に押出成形される素材として金属、重合体、セラミックス、コンクリート、食品などがあり、アルミサッシのようなアルミニウム製品の加工で多用されている。理論的には無限に長い物体を形成でき、実際にも多数の部品を連続的に製造できる。押出成形プロセスは熱い素材にも冷たい素材にも適用可能である。

押出成形」(2020年5月11日 (月) 05:52 JST)『ウィキペディア日本語版』

アルミ押し出しヒートシンクを設計する際のポイント2つ

それではアルミの押し出しによるヒートシンクを設計する際のポイントを見ていきましょう。下記の2つが設計を行う際の重要なポイントとなっています。

  1. トング比
  2. 対称形状

押し出し加工を行う際のアルミ材そのものと金型の気持ちになれば、自然と今回ポイントにおいた背景が理解できてくるかと思います。上記2つのポイントですが、「アルミ材と金型の間に生まれる摩擦抵抗」に焦点を当てた考えとなります。
この2つのポイントを押さえた形状にしておくことで、量産時でもトラブルの少ない加工に優れた押し出し部品にすることができます。
それではポイントとなる「トング比」と「対称形状」について、詳細に見ていきたいと思います。

① トング比

トング比は以下の計算式で求めることができます。

トング比=フィン高さ/フィン間の隙間
アルミ押し出しヒートシンクの設計ポイント:トング比計算式

トング比を見ることで、押し出し加工の難易度を把握することができます。メーカー各社ごとに実力に違いがあるため全て一様ではありませんが、一般的にトング比が18以下が加工可であると判断されています。
このトング比ですが、数値が高くになるにつれアルミ材と金型との摩擦抵抗が大きくなることを示しています。設計サイドからするとヒートシンクの表面積が大きくなることを意味しており、ヒートシンクの機能から見ると大歓迎なのですが、一方、加工サイドから見てみると、摩擦抵抗が大きくなることから、トング比の値が大きくなればなるほど、加工しにくい部品となります。
それではメカエンジニアとしてはトング比をいくつに設定して設計を行えばよいのか。
これまでの経験から「トング比 ≦ 10」となる設計を行うようにしています。
上の指標でいうと概ね中央の値となります。このトング比ですが量産性を考慮した場合のMax値に設定している加工メーカー様が多く、更により値の小さい「トング比 ≦ 8」であれば、金型打合せの際にメーカーに頭を抱えるられるようなこともなく、量産時におけるトラブルもほぼゼロに等しくなります。

アルミ押し出しヒートシンクの設計ポイント:トング比

エンジニアとしては、本来のヒートシンクの機能から見て、少しでも表面積を大きく取ることで放熱性を高めたいところではありますが、加工のできない部品を設計したところでただの夢物語といった幻の部品となってしまいます。問題なく容易に加工できる部品、すなわちトング比を少しでも小さくしてあげられるような設計を心がけることが、エンジニアとしてとても重要なこととなります。

アルミ押し出しヒートシンクなどを設計する際のトング比計算ツールです。

アルミ押し出しヒートシンクなどのトング比計算ツール

② 対称形状(=シンメトリ形状)

押し出し加工は「ところてん」のごとく押し出しによる加工法であることから、対称形状とすることで加工難易度を下げることができます。
この対称形状を目指す理由ですが、「アルミ材が押し出される速度を全ての部位において均一にしたい」ためです。

アルミ押し出しヒートシンクの設計ポイント:対象形状

例えば、押し出し形状の左側がトング比が高く、右側のトング比が低かった場合、左側は摩擦抵抗が大きくなっていることを意味することから、押し出し速度が遅くなります。一方、右側については摩擦抵抗が小さいため、左側と比較し押し出し速度が早くなることから、押し出し後の反りや残留応力を発生させる要因となります。
設計を行う際、完全対称となる形状設計が難しい場合もあるかと思いますが、その場合は完全対象が無理であっても、少しでも対称形状に近づくよう、調整をかけて行くことが、エンジニアとしてとても重要なこととなります。

最後に

いかがでしたでしょうか。これまでヒートシンクをはじめとしたアルミの押し出し加工の経験がなく、不安に思われるエンジニアの方が多いかと思います。
ただ今回ご紹介したことに限らず、ものづくりをしていく上でとても大切なことが1つだけあります。それは加工を行う際の登場人物となる部品材料そのものと、その相手となる工具や金型との関係がどのようになっているかを、より丁寧により深く見つめていくことこそが、とても大切なことになっているように思えます。

幼少時代から培われてきた、遊びなどから得た実体験をベースに想像してみることで、部品ができるまでのメカニズムが漠然としてるものの直感的に浮かび上がり具現化することで、自然と最適な形状に結び付いているといった場面に遭遇することが、実際に設計している場面で多々あります。
エンジニアは要求仕様を満足させるべく形状自体を最優先に考えがちですが、生産性も考慮した量産性の高い部品形状を様々な視点やアイディアを持って生み出していくことこそ、より優れたエンジニアであるということが言えるのではないでしょうか。このことは若手エンジニアとベテランエンジニアとで経験からくる大きな差となっているのは言うまでもありませんが、決して1日にして得られるものではありません。

そんなスーパーエンジニアになるためには、日々の経験や多くの知見が必要となります。その経験や知見は仕事から得たものだけではなく、プライベートの遊びから得たものが功を成す場合が多々あります。想像も大切ですが実体験が一番確実なものであり、必ず自分自身の自信へとつながっていきます。不思議に思ったことや理解できなかったことは、興味本位で自分が納得できるレベルまで調べてみる。やはりこれに尽きると思います。例えば、高額な買い物をする際、購入候補となる製品を数点調べ、機能や金額を徹底的に調べ上げ比較した後に購入に至るかと思います。この行為そのものは、実は自分が納得できるような材料を集めているに他ありません。そう!大切なのはこの感覚なのです。

スーパーエンジニア。あなたなら必ずそこへ到達できるはずです!少なくとも私はそんなエンジニア達を本ブログとなる“Show Notes“を通じて影ながら応援しています。また私自身も、日々の設計業務通じて色々な発見を楽しんでいる今日この頃です。

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