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目次
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はじめに
AirPodsと言えば、ホワイト1色だけのラインナップ。
他にSONY製の「WF-1000XM3」を見てみると、プラチナシルバーとブラックの2色展開。
Beats by Dr. Dre製の「Powerbeats3 Wireless」にいたっては、虹色とまではいかないものの、カラフルな多色展開となっており、自分好みの色を選択することで、個性を手に入れることができます。
それではなぜ、現在リリースされている「AirPods」や「ApplePencil」といった製品は、ホワイト1色だけのカラーバリエーションとなっているのでしょうか?
今回はこの謎について、想像力満載のエンジニア目線で、少し紐解いていきたいと思います。
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Appleはなぜ、ホワイト1色だけを選択したのか
企業が製品企画を行う際、多数の製品ラインナップを展開していきます。
iPhone 1つを例にしても以下のとおりです。
- iPhone(冠なし)
- iPhone Pro
- iPhone Pro Max
これらは闇雲に複数の製品を開発しているわけではなく、主に3C分析を柱とした、企業の向かうべく方向性や市場の動向、ユーザーの声、競合製品を元に、出すべく製品の意味付けを明確に定め、戦略的に製品ラインナップが決められているはずです。
それではなぜ、カラーバリエーションをホワイト1色だけとしたのか。
いくつかの視点でAppleの狙いを考えていきたいと思います。
ユーザー目線で考えてみると…
AirPodsは、イヤリングとまでは言いませんが、アクセサリの一面を兼ね備えています。
アクセサリには、髪型や洋服、季節感、その時々の気分といったものを映し出す力があり、他の人達にも影響を与える力を持っています。
この視点で考えるてみると、どうでしょうか?
ホワイト1色だけの展開では、物足りなさを感じます。
例えばホワイト1色だけではなく、5色展開されていたとすれば、どうでしょうか?
少し想像してみましょう。
単純に見ても、街中や電車で、同色の人に巡り会う確立は、ホワイト1色だけの時と比較し、1/5=20%の確率となります。
また個性については、色数が増えた分=5倍、好きな色で自分を豊かに表現することができるでしょう。
ブラック好きなおじさま方。学生男子であれば少しダークな感じのブルー系。淡いピンクの洋服でコーディネートした女性の方であれば、現行のホワイトはもちろんのこと、淡いパープルやイエロー系も、とても映えるかと思います。
また究極の使い方として考えられるのは、色違いで2セット購入し、左耳には淡いブルー、右耳には淡いグリーンといったように、片耳ごとに色違いのAirPodsを身に付け、プールサイドで涼しげにKindleを片手に優雅に時間を過ごすといった、まさにわれわれの想像を超えた使い方も出てくることでしょう。
彼氏と彼女で色違いで片耳ずつ交換して使えば、より親密な関係を作ることもできるでしょう。
そう! ホワイト1色だけではなく、多色展開することで、考えれば考えるほどAirPodsが使われるシーンというものは、無限大に広がりを見せるのです。
それではなぜ、AirPodsやApple Pencilは、あえてホワイト1色だけの展開としたのでしょうか?
もちろんAppleは、私が想像しているようなことは、全て想定内となっているはずです。
これを紐解くには、一旦はユーザー側の目線は置いておいて、Appleすなわちメーカー側の目線が必要となります。
私自身エンジニアということもあり、製品開発側の視点を少なからず持ち合わせています。
次はその辺りについて個人目線ではありますが、これまた想像力満載で少しばかり紐解いていきたいと思います。
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メーカー目線で考えてみると…
Appleの目指すデザインはSimple is bestの一択です。
新製品には、新たな機能や形状の実装がもちろん必要不可欠となりますが、Appleの基本スタンスは、無駄な機能や形状をいかに削ぎ落とすか。
まさに、これに尽きます。
このことは、製品を使えば使うほど思い知らされることが多々あります。
例えば、iPhoneを使っている方がiPadを新たに購入した場合、違和感なく使いこなすことができます。
機器ごとに無駄に新たな操作方法を増やすようなことはせず、操作方法を統一しているからです。
標準アプリの1つに、設定を行うための歯車マークが描かれたアプリがあります。
iPhone や iPad はもちろん、MacBookやAppleWatchに至るまで、全て共通の仕様で作られています。
このことは設定アプリに限らず、基本全てのアプリでも同じことが言えます。
ここから本題に入っていきますが、AirPodsやApple Pencilがなぜホワイト1色展開としているのか。
まさにSimple is bestの発想につながっていきます。
街中でホワイトのイヤホンをしている方を目にした場合、あなたは、どのメーカーのイヤホンだと感じるでしょうか?
「そんなマニアックな見方で日々過ごしていません!」という方が大半だと思いますが、少なからずAppleやiPhoneを連想する方がいるかと思います。
そのイヤホンにはリンゴマークが入っている訳でもなく、もちろんAppleといった文字も一切入っていません。
それではなぜ、ホワイトのイヤホンを見てAppleやiPhoneを連想したのでしょうか?
まさにこれがAppleの考える戦略なのです。
ユーザー目線で例に出しましたが、これが 5色展開されていたとすれば、どうでしょうか?
連想するメーカーすなわち想像範囲が単純に5倍に膨みます。
それでは売り上げが落ちるということで、他のメーカーと同様に、リンゴマークといったメーカーロゴや、Appleといったメーカー名をイヤホンに印刷することになるでしょう。
その結果、見た目はスマートさを欠いた煩雑なものとなり、印刷といった製造工程が増えることで、コストアップにつながります。
また、成形部品を5色用意しないといけないことから、成形材も個別に5種類必要となり、製造工程や検査工程、在庫管理といった、製品が出荷されるまでの全ての工程において、全部が全部ではありませんが、5倍に膨れ上がり、最終的にはコストアップにつながります。
このことは結果的に製品価格へつながり、最終的には、われわれユーザー側への負担へとつながってきます。
また、ホワイト1色だけとしている理由として、成形品の設計に精通されている方であれば容易にご想像いただけるかと思いますが、成形品特有の外観不良を目立たないようにすることができるからです。
成形品特有の外観不良というのは、フラッシュ、フローマーク、ウエルドマーク、白化、傷といったもので、成形品の色がブラックをはじめとする濃い色だった場合、外観不良痕がホワイトに近い色合いであることから、不良箇所が浮き彫りとなり、NGとなる可能性が大となります。
これがホワイトだった場合、仮に外観不良となる痕が出ていたとしても、製品自体のホワイトを同化し見立たなくなるため、NGとなる可能性を低くすることができます。
そうなのです!Appleはここまでを想定して、あえてホワイト1色の展開で挑んでいるのです。
製品設計をしていると、課題にぶち当たることで対策を行い、また課題に当たって対策を行うといった手法をよくとります。
課題と対策の繰り返しで、より進化した多機能な製品に生まれ変わっていく一方で、なにか課題が生じた場合、その場合しのぎの切り貼りによる対策を続けたことで着膨れしてしまい、結果的に原因究明に大きな時間を要します。
それとは全く相反するSimple is bestといった無駄を削ぎ落としていく思想。
一見、簡単そうに思える単純化。
製品開発だけの話でもなく、この思想は日常生活において必ず役に立ち、ストレスフリーの実現にもつながっていくかと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は、いちエンジニアの視点だけで想像力満載ではありましたが少し深掘りをして考えてみました。
普段何気なく手にして日常生活の中で使っている製品達。
実は形状のライン1本に至るまで、意味合いや理由付けを行い、人に対する振る舞いも考慮して、無機質なものを魂の宿る製品へと具現化しているのです。
このような哲学は、Appleに限らず、TOYOTAやHONDA、SONYやPanasonicなど、各企業それぞれの形で信念をもって日々製品開発に取り組んでいます。
日頃使っている生活を豊かにしてくれる様々な製品達。
今回は「AirPodsの色がなぜホワイト1色だけなのか?」を切り口に、ふと思い当たることを長々と記載してしまいましたが、なにかしら最後まで読んでいただいたみなさまの、思考や会話が芽生えるきっかけとなれば、とてもうれしく思います。
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参考情報
Simple is best。
Appleの思想やデザイン哲学に興味を持たれた方は、ぜひ一度、この本を読んでいただきたいと思います。
ソフトエンジニアはもちろん、ハードエンジニアの方(特に筐体設計に携わっている方)は特に必見です。
また、就職活動をされていて、エンジニアという職が選択肢に入っている学生の方は、職業を決めてしまう前に、ぜひ一読いただき、視野を少しでも広げておいていただきたいと思います。
また、iPhoneを持たれている方は、ぜひ「AirPods Pro」の購入をおすすめします。Apple Watchと同様で、あなたの生活に、より厚みをもたらせてくれるはずです。