スナップフィット(嵌合つめ)の強度計算ツールと判定方法

スナップフィット(嵌合つめ)の強度計算ツール 製品設計のいろは

成形品(樹脂部品・成形部品)の強度計算と言えば、スナップフィット(嵌合つめ)の強度計算が代表的なものとして挙げられます。接着剤を使うことなく個々の部品同士を嵌合させる(組み合わせる)ことができるため、テレビリモコンの電池カバーをはじめ、ありとあらゆる成形品にスナップフィットが多用されています。今回はそんなスナップフィットの強度計算ツール(ひずみ計算)と判定方法について、みなさんに Show Notes しておきたいと思います。

目次

スナップフィット(嵌合つめ)の強度計算ツール

スナップフィットの強度計算ツールです。
ひずみ(ε)を計算することで強度判定を行うことができます。

スナップフィット(嵌合つめ)強度計算

ε=3hδ/2L^2

・ε:ひずみ
・h:板厚[mm]
・δ:たわみ量[mm]
・L:うでの長さ[mm]

判定基準
・「物性値 引張りひずみ(降伏点)× 安全率」>「ひずみ計算結果」・・・ OK
・「物性値 引張りひずみ(降伏点)× 安全率」≦「ひずみ計算結果」・・・ NG
補足
材料メーカーが公開している物性値には、「ひずみ(単位なし)」が記載されている場合や、「ひずみ率(単位:%)」が記載されている場合があります。
判定の際は十分に注意してください。(値が2桁異なります)
テクニック
「物性値 引張りひずみ(降伏点)× 安全率」の代わりに、市場で製品が使われている期間が長く不具合情報がないことを前提に、実績のある量産部品の形状からひずみの値を計算し、判定値として使用する場合もあります。開発部署だけではなく、品質保証の部署ともよく相談の上、使い分けるようにしてください。

エクセル版:スナップフィット(嵌合つめ)の強度計算ツール

下表を全コピーしてエクセルのA1セルにペーストすれば計算シートとして活用できます。
青字セルに値を入力すると、赤字セルにε(ひずみ)に関する計算結果が表示されます。

入力値    
 h板厚(値を入力)mm
 δたわみ量(値を入力)mm
 Lうでの長さ(値を入力)mm
計算結果    
 εひずみ=(3*D2*D3)/(2*D4^2)
εひずみ率=((3*D2*D3)/(2*D4^2))*100%

豆知識

一般的に強度計算は、今回ご紹介した「ひずみ(ε)」ではなく、「応力(σ)」を計算することで、ものが「壊れる/壊れない」の判断を行います。
私が学生だった頃の記憶をたどっても、応力計算による強度判定の演習が主で、ひずみの計算によって強度判定を行った記憶があまりありません。

それではなぜ今回、「ひずみ」を計算して強度判定を行うのでしょうか?
理由は2つあります。

1つ目は、学生時代に習った「σ=Eε(フックの法則)」を前提とすることで、結果的にσを見ていることと同じ考えとして扱うことができるためです。
塑性変形前の弾性領域において、応力(σ)とひずみ(ε)は、ヤング率(E)を傾きとした単純な2次関数として考えることができ、応力とひずみは比例関係にあります。
このことから、ヤング率は材料により値が決まっていることから、ひずみの値はヤング率を介することで、結果的に大きな観点で見ると、応力の値を見ていることと同じ考えとして扱うことができるのです。

2つ目は、ひずみの計算式は使用する値の数が少なく、ごく簡単に計算を行うことができるためです。
板厚、たわみ量、うでの長さといった、計3つの値だけで計算が行えるのです。
もちろんひずみではなく応力に関する計算式から、応力計算を行うことも可能ですが、スナップフィットのたわみ量が最大となっている時の「荷重(スナップフィットのつめ山にかかる力)」が計算式に必要となってきます。
この荷重は、物が手元にあればもちろん計測可能ですが、新規設計の場合、試作前段階での強度計算(試作にお金を使ってもよいのかの判断材料)であることから、物がなく計測ができません。
よって、フックの法則や片持ち梁のたわみ計算式などから荷重に違う値を置き替え数式を変形させ導いた計算式が、今回ご紹介したひずみの計算式になっているのです。

スナップフィット(嵌合つめ)│ひずみを使った強度計算式の導き方

スナップフィット(嵌合つめ)│ひずみを使った強度計算式の導き方

最後に

豆知識に記載した1つ目と2つ目の理由については、また個別に少し深堀りしていきたいと思います。
日頃よく使っている計算式でも、計算式にいたった背景などを漠然とでも納得した形で使うことで、また違った景色が見えてくるかと思いますし、その行為は必ず知見に広がりを生み出してくれるはずです。
今回何らかの形でこのページにたどり着いたかと思いますが、この Show Notes のブログを目にすることで、次のアクションへと繋がるきっかけになれば、私自身とてもうれしく思います。

それでは今日も1日、よりシンプルな素晴らしい設計を!

補足

今回のスナップフィットをはじめ、成形品は加工上の制約から抜き勾配が必要となります。
この抜き勾配ですが、板金や切削にはない成形品特有の問題として肉厚に変化をもたらします。
抜き勾配により肉増となった場合はヒケの要因、減肉となった場合は成形時の樹脂充填不良や強度が低下することとなります。
以下が抜き勾配角に応じた肉厚の変化量を計算してくれるページとなります。
必要によりこちらもご活用いただき、事前に肉厚がどの程度変化するのかを把握しておいていただければと思います。

成形品│抜き勾配による肉厚変化量計算ツール

成形品│抜き勾配による肉厚変化量計算ツール

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